男性の更年期障害について
【男性の更年期障害とは】
加齢による男性ホルモン(テストステロン)の低下によってさまざまな症状が出現する病態をLOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)と呼んでいます。これがいわゆる男性の更年期障害です。
女性は50歳前後から女性ホルモンが急速に低下し更年期障害が起こることは有名ですが、男性も男性ホルモンの低下によってさまざまな症状が現れることが知られるようになってきました。LOH症候群と診断される患者さんは50~60歳代の方が最も多いですが、早いと40歳代で診断される方もいらっしゃいます。もしかしたら男性更年期障害かも、と思われる方は、一度検査をしてみると良いでしょう。
~まとめ~
【男性ホルモンの作用】
男性ホルモンには生殖機能を維持する以外に多くの生理的な機能があります。
✅脳への作用(認知・気分)
✅骨の健康維持
✅筋肉系への作用
✅脂質・糖代謝への作用
✅心血管系への作用
✅造血系への作用
✅性機能への作用
【更年期の様々な症状】
更年期の症状は個人差が大きいです。下記のような障害や疾患が現れることがあります。
*精神・神経系の症状
抑うつ感、判断力・集中力の低下 、不眠、不安感 など
*身体症状
全身倦怠感、筋力低下、発汗、ほてり
*性機能障害
勃起不全、性欲減退
*その他の症状
骨密度の低下、脂質代謝異常、睡眠障害
【男性更年期障害の判定の仕方】
•問診票(AMSスコアなど)→ 症状の重症度を評価します。
・血液検査
→ 総テストステロン、遊離テストステロンの測定
*総テストステロン:30歳以降、年に約1%ずつ低下
*遊離テストステロン:より急激に低下
→ 午前中の採血が推奨されます(テストステロンは日内変動あり)
指標 |
参考値(AM採血) |
LOH症候群 |
総テストステロン |
約3.0~8.0ng/ml |
2.5ng/ml未満 |
遊離テストステロン |
8.5pg/ml未満で症状が出ることが多い |
総テストステロン2.5ng/ml以上で、7.5pg/ml未満 |
※各測定値にかかわらず総合的に判断することが重要で、テストステロン補充の妥当性を考慮し、「妥当性あり」と判断すれば、LOH症候群と診断する
理由) 診断基準の“測定値にかかわらず総合的に判断する”という理由は、アンドロゲン受容体の活性効率に影響するN末端のCAGリピートがアジア人は長く、活性効率が低い可能性がある。そのため、テストステロン値が基準値以上でも補充療法が有効の可能性があるため。
⚠️注意点
血中テストステロン分泌は午前9時頃にピークを迎え夜にかけて低下するため、午前7~11時の間に空腹で採血すること。