AGAのお話


1. AGAとは何か(原因・メカニズム)


AGAAndrogenetic Alopecia)とは?

  • 男性型脱毛症のことです。
  • 思春期以降に徐々に進行する「進行性の脱毛症」で、主に前頭部や頭頂部の毛が薄くなります。

 

原因の中心は「男性ホルモン」+「遺伝」

① 男性ホルモン(アンドロゲン)の関与

男性ホルモンの一種「テストステロン」が、酵素「リダクターゼ」によって変換されると、「ジヒドロテストステロン(DHT)」という強力なホルモンになります。DHTが毛包(毛をつくる部分)に作用すると、ヘアサイクル(毛周期)の「成長期」が短くなり、毛が十分に育たなくなります。

② 遺伝的要因

AGAは遺伝する傾向があります。特に「母方の家系」からの影響が強いとも言われますが、これはX染色体上にあるアンドロゲン受容体遺伝子が関与している可能性があるためと考えられています。ただし、遺伝だけで決まるわけではなく、複数の要因が絡んでいます。


AGAのメカニズム

  1. テストステロン(男性ホルモン)

 リダクターゼ*

  1. DHT(ジヒドロテストステロン)

 

  1. 毛包にある受容体に結合

 

  1. ヘアサイクルが乱れる(成長期が短くなる)

 

  1. 毛が細く短くなり、最終的には生えなくなる(ミニチュア化)

🔸ここまでの要点まとめ

  • AGAは男性ホルモン(DHT)+遺伝要因によって毛が細く短くなる進行性の脱毛症。
  • 毛根が死ぬわけではなく、毛が育ちにくくなる状態。
  • 原因となるホルモンは「DHT」、鍵を握る酵素は「リダクターゼ」。


2. AGAの進行のパターンと症状

AGAは「徐々に進行するタイプの脱毛症」で、特徴的な脱毛のパターンがあります。


よく見られる3つの代表的な進行パターン


🔸ここまでの要点まとめ

  • AGA M型・O型・U型など、特徴的な進行パターンがある。
  • 「ノーウッド分類」で進行度を評価できる。
  • 症状は 抜け毛の増加よりも、髪が細くなる(ミニチュア化)ことに注目。
  • 他の脱毛症との違いを理解することも大事。

3. AGAの検査・診断方法

AGAは視診(見た目)を中心とした臨床診断が基本ですが、必要に応じて補助的な検査も行われます。


主な診断方法


① 問診と視診

  • いつ頃から脱毛が気になり始めたか
  • 家族歴(遺伝の有無)
  • どの部位が薄くなっているか
  • 毛の太さ・密度の変化

医師はこれらをもとにAGAの進行パターン(M/O/U型)を確認します。


補助的に行われる検査


② マイクロスコープ検査(拡大カメラ)

  • 頭皮を拡大して毛の状態を確認。
  • 正常な毛とAGAによる「ミニチュア毛(細くなった毛)」の割合を観察します。
  • 太い毛と細い毛が混在していると、AGAの特徴とされます。


③ 写真による経過観察

  • 治療前・治療中・治療後の写真を記録して、進行や改善を確認します。


④ 血液検査(希望・必要に応じて)

  • 男性ホルモン(DHTなど)の測定は一般的には行われません。

体内のDHT濃度よりも「毛包の感受性」がAGA発症に影響するため。

ただし、

  • 肝機能・腎機能・ホルモンバランス
  • 前立腺の腫瘍マーカー(PSA

などは内服治療を始める前の安全確認として検査することがあります。



鑑別診断(AGA以外の脱毛との区別)

医師は視診などを通じて、以下のような脱毛症との見極めも行います。


🔸ここまでの要点まとめ

  • AGAの診断は、問診・視診(見た目)+マイクロスコープ観察が中心。
  • 血液検査や遺伝子検査は、治療の安全確認や補助的な役割。
  • 他の脱毛症との鑑別も大切。

4. AGAの治療法

AGAは進行性の脱毛症ですが、進行を遅らせたり、毛を太くしたりする治療が可能です。大きく分けて以下のような治療法があります。


内服薬(飲み薬)


フィナステリド(商品名:プロペシアなど)

  • リダクターゼ型を阻害し、DHTの産生を抑える。
  • 進行を止める・予防する効果が期待できる。
  • 通常は 11回の服用。

⚠️副作用→性欲減退、勃起不全、肝機能の変化など

 


デュタステリド(商品名:ザガーロなど)

  • リダクターゼ型・型両方を阻害。
  • フィナステリドよりも DHT抑制効果が強力。
  • 効果もやや高いが、副作用リスクもわずかに増える。

⚠️両薬ともに「妊娠中の女性が触れることは禁止!(胎児への影響)


外用薬(塗り薬)


ミノキシジル(市販:リアップ/医療用:高濃度タイプなど)

  • 血管を拡張して、毛根への血流を改善。
  • 毛包を活性化し、毛を太く・長く成長させる効果。

⚠️副作用→かぶれ、かゆみ、頭皮の炎症

→高濃度では全身の多毛や動悸の報告もある


カルプロニウム塩化物(保険:フロジン液)

 • 局所血管拡張作用により、頭皮の血行促進

⚠️副作用→一過性の発赤、掻痒感、刺激痛、局所発汗



その他


自毛植毛(外科的治療)

  • 後頭部など「DHTの影響を受けにくい毛」を薄い部分に移植。
  • 定着すれば半永久的に生える。

⚠️高額(数十万円~数百万円)、施術後に一時的な脱毛(ショックロス)があることも。


メソセラピー/HARG療法

  • 成長因子・ミノキシジルなどを頭皮に注入。
  • 医療機関でのみ提供され、科学的根拠が弱めな治療も混在。

⚠️ 施設の選定は慎重に。

 

サプリ・漢方・栄養療法

  • 直接のAGA改善効果は限定的。
  • 亜鉛・ビタミンD・鉄などが不足している場合は補うとよい。

AGA治療の注意点


🔸ここまでの要点まとめ

  • 内服薬は進行を止める(フィナステリド・デュタステリド)。
  • 外用薬は毛を太く育てる(ミノキシジル)。
  • いずれも継続がカギ。最低半年~1年は様子を見る。
  • 効果や副作用には個人差があるため、医師と相談しながら調整する。

5. AGAと生活習慣の関係

AGAの直接の原因は「男性ホルモン(DHT)」+「遺伝」ですが、生活習慣が間接的に影響を与えることはあります。「生活習慣だけでAGAが治るわけではない」ものの、進行を早める要因を避ける、または、治療効果を高める補助として重要です。


関連が指摘される生活習慣


睡眠不足・不規則な生活

  • 成長ホルモンの分泌が低下し、毛母細胞の働きが鈍くなります。
  • 睡眠中(特に22時~2時)に細胞修復が行われるため、早寝早起きが推奨されます。


ストレス

  • 強いストレスは自律神経を乱し、血流低下やホルモンバランスの乱れを招きます。
  • ストレスにより円形脱毛症やびまん性脱毛の誘因になることも。


食生活の乱れ

  • 極端な偏食・過度な糖質や脂質の摂取 皮脂過剰や頭皮環境の悪化。
  • 毛の成長に必要な栄養素(例:たんぱく質、亜鉛、鉄、ビタミン類)が不足すると、髪の質が低下をきたします。


喫煙

  • 血流を悪化させ、頭皮への酸素や栄養供給が減る。
  • ニコチンによりDHTが増える可能性も指摘されています。


アルコールの過剰摂取

  • 適量であれば大きな影響はないが、過剰摂取は肝機能の低下ホルモン代謝に影響。


過度のダイエットや運動不足

  • 急激な減量で栄養不足になると、びまん性脱毛を引き起こすことも。
  • 一方、適度な運動は血流改善・ストレス軽減に有効です。


頭皮ケア・洗髪習慣について


  • 洗いすぎや強いシャンプー 皮脂の取りすぎ乾燥や炎症
  • 洗わなさすぎ 皮脂詰まり毛穴トラブル
  • 洗髪は11回・ぬるま湯で優しく、が基本です。

⚠️「育毛シャンプー」なども補助的にはよいですが、治療薬とは別物です。



育毛に良いとされる栄養素


🔸ここまでのまとめ

  • 生活習慣はAGAの直接の原因ではないが、進行や治療効果に影響を与える要因となりうる。
  • 規則正しい生活・バランスのよい食事・ストレス管理・適度な運動は、育毛環境を整える意味で非常に大切。